岩佐倫太郎(美術評論家) 講演会@大阪大学のごあんない

コロナ禍も収まり、控えていた講演会活動を2年ぶりに再開いたします。テーマは「広重からモネ・ゴッホへ」。浮世絵がルネサンスを破壊して、モネやゴッホらの新しい近代美術をいかにして生んだのか。東西文化の生々しい交流の美術史を多くの画像を見ながら…

「積みわら」の絵は浮世絵から生まれ出た、と言うと驚かれるだろうか?

モネ《ジヴェルニーの積みわら、夕日》65×92cm 1888‐89 埼玉県立近代美術館 いま大阪中之島美術館で人気開催中の「モネ 連作の情景」(2024年5月6日まで)に、3月26日から待望の1点が追加されました。《ジヴェルニーの積みわら、夕日》…

モネの「筆触分割」は、どのようにして生まれたのか? 「モネ――連作の情景」(中之島美術館)を見て

講演会の予告 6月9日(日)14時30~ (仮題) 「広重からモネ・ゴッホへ」~近代西洋美術はこうして始まった~ 於:大阪大学中之島センター10F 佐治敬三メモリアル・ホール 主催:大阪大学理学部数学科同窓会 協賛:民間企業及び講演会をサポートす…

「モネ連作の情景」大阪中之島美術館より 

《睡蓮》の向こうに、光琳の《燕子花かきつばた》を見た 印象派を代表するフランスの画家、クロード・モネ(1840‐1926)の連作展が、東京展(上野の森美術館)のあと、大阪の中之島美術館にやってきています。展示作品は70点で、全てがモネ。海外…

⑤モナ・リザは、ミロのヴィーナスの再来か?

■ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》⑤ モナ・リザは、ミロのヴィーナスの再来か? モナ・リザは、ミロのヴィーナスを下敷きにしていたーーと言うのが最近の僕の気づきです。誤解のないよう先にお断りしておくと、ミロのヴィーナスがエーゲ海のミロス島で農夫に発見…

➃モナ・リザは、なぜ顔を7:3にしているのか。

■ダ・ヴィンチ 《モナ・リザ》➃ モナ・リザは、なぜ顔を7:3にしているのか。 僕は前回、「モナ・リザとは受胎告知図である」、と書きました。モナ・リザは妊婦で、「科学の時代の真実が、ここから生まれる」ことを、寓意的に表わしています。伝統画を隠れ…

➂モナ・リザは科学の時代の聖像(イコン)である。

■ダ・ヴィンチ 《モナ・リザ》➂ モナ・リザは科学の時代の聖像(イコン)である。 注文を受けたはずの肖像画がなぜ、ダ・ヴィンチの手元に最後まで残ったのか?モナ・リザは2点あったのだとか説はいろいろですが、僕のストーリーをフィクションにするとこう…

②モナ・リザは、般若心経である。

「この名画はなぜ名画なのか」シリーズ ■ダ・ヴィンチ 《モナ・リザ》② モナ・リザは、般若心経である。 いきなりトンデモ説のタイトルみたいですが、別にモナ・リザが仏教だと言っている訳ではありません(笑)。ダ・ヴィンチの膨大な手稿(=科学ノート)…

①モナ・リザは、本当に美しいでしょうか?

「この名画はなぜ名画なのか」シリーズ 第6回 ■ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》① モナ・リザは、本当に美しいでしょうか? パリのルーヴル美術館。世界でもっとも有名な絵画と言われるモナ・リザ(1503‐06制作)は、セーヌ河沿いの「ドゥノン翼」の建物を2階…

あけまして おめでとうございます。

あけまして おめでとうございます。 新年早々、思いがけない能登の震災。被災地の皆さま、ご友人に心よりお見舞い申し上げます。 さて、辰年にちなむクイズです。日本でいちばん龍が多く棲息している都府県は、どこでしょうか?小生の観察では京都がいちばん…

2023年の音楽日記

【2023年の音楽日記】今年(2023)は正月に、吉村ひまりちゃんという 11 歳のバイオリニストを聞きに行きました。天才少女などとはもう呼べないくらい音楽性が確立していて、演奏のオーラに感銘を受けました。体が成長したらどんな演奏家になるのか、とても…

辻井伸行 ショパン 別れの曲 (12のエチュード作品10 第3番)を聴く

辻井伸行 ショパン 別れの曲 (12のエチュード作品10 第3番)を聴く (2023年の)11月25日のこと、サッカーのヴィッセル神戸の初優勝を見届けて、体の興奮が冷めやらないままTVを見ていたら、BSフジで僕の好きなピアニストの辻井伸行の海外音楽紀行をやって…

ボローニャ歌劇場日本公演、プッチーニの「トスカ」にブラーヴォ!

ボローニャ歌劇場日本公演、プッチーニの「トスカ」にブラーヴォ! はじめて「トスカ」を見たのはもう何十年も昔。そのころ僕はマリア・カラスにハマっていて、ベッリーニやヴェルディ、プッチーニらのイタリア・オペラのLP(!)を熱病のように聞きまくって…

カラヴァッジオ 《聖マタイの召命》 この名画はなぜ名画なのか⑤

「この名画はなぜ名画なのか」シリーズ 第⑤回 カラヴァッジオ 《聖マタイの召命》 1600 縦322×横340 サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会(ローマ) ルネサンスの3大巨匠のひとり、ダ・ヴィンチがミラノの教会の食堂に《最後の晩餐》を描いておよ…

タイガース・ファン必見!《虎図襖》重要文化財 大阪中之島美術館 長澤芦雪展

【タイガース・ファン必見!《虎図襖》重要文化財 大阪中之島美術館 長澤芦雪展】 長澤芦雪筆 重要文化財《虎図襖》和歌山 無量寺・串本応挙芦雪館 画像は重要文化財の《虎図襖》(とらず ふすま)。題名通り虎の絵を、墨で襖に描いた大作ですが、作者は長澤…

「この名画はなぜ名画なのか」■ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》シリーズ第④回

「この名画はなぜ名画なのか」シリーズ 第④回 ■ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》 縦4.6×横8.8m サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会(ミラノ) 1495‐98年 《最後の晩餐》は、ダ・ヴィンチがミラノの寺院の食堂の壁に直接描いた横幅9メートル…

開催中【走泥社再考――京都国立近代美術館】

【走泥社再考――京都国立近代美術館】 八木一夫《ザムザ氏の散歩》1952 写真のような焼き物を眼にした時に、陶芸ファンはいったいどのようにこれを鑑賞すればいいのか。何かツノの出たタンバリンか、転がる王冠なのか。あるいは海の腔腸動物のような生命…

残暑お見舞い申し上げます。

(下の絵は数年前、宝塚のコミュニティ誌に頼まれて描いた表紙の絵です) 夏休み日記――。暑さをしのぐには音楽ホールか芝居小屋で過ごすに限ると、今夏もオペラと文楽に通いました。なにしろ空気のボリュームが大きいので、ジャケットを着ていてもまだ寒いこ…

「この名画はなぜ名画なのか」③ ボッティチェルリ《ヴィーナスの誕生》

「この名画はなぜ名画なのか」シリーズ 第③回 ■サンドロ・ボッティチェルリ 《ヴィーナスの誕生》 縦172.5×横360cm ウフィッツイ美術館(フィレンツェ) ルネサンスとは何であったか?その本質をたった1枚の絵で語るなら、ダ・ヴィンチでもなくミケ…

暑中お見舞い申し上げます。      2023年 盛夏

暑中お見舞い申し上げます。 2023年 盛夏 滝の水しぶきとイリュージョンで、しばし涼感をお楽しみください。 歌川国芳 《坂田怪童丸》江戸末期 巨鯉(きょり)と取っ組み合いの相撲を取っているのは、ご存じ(坂田の)金太郎です。歌川国芳《坂田怪童丸》。…

モーツアルトのオペラ、「ドン・ジョヴァンニ」はどんな物語か

【モーツアルトのオペラ、「ドン・ジョヴァンニ」はどんな物語か】 今年の夏も期待通りの大盛り上がりだった佐渡オペラ。いよいよ明日(2023/7/23)で千秋楽と聞くと、一抹の寂しさを感じます。天才モーツァルトの妙なるメロディの楽園に遊び、歌手たちの美声…

モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」に2日連続で出かけました。

【モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」に2日連続で出かけました】佐渡裕芸術監督がプロデュースするオペラ・シリーズは、関西のオペラ・ファンが毎夏、心待ちにするもので今年(2023)でもう18回目。去年はプッチーニの「ラ・ボエーム」、その前年…

【巫女は舞う、神楽の囃子に乗って】

【巫女は舞う、神楽の囃子に乗って】 古事記や日本書紀に記された「国産み神話」の始まりの舞台、淡路島。先に書いたように、伊弉諾尊(いざなきのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)が天界から地上のオノゴロ島に降り立ち、石柱の廻りを回ったあと夫婦…

【神話と歴史の島に、巨大な海獣が吠えるのを見た】

【神話と歴史の島に、巨大な海獣が吠えるのを見た】 京都の古代史の仲間と3年ぶりに歴史探訪の旅に出かけた。会の代表は芥川賞作家の高城修三さん。マイクロバスで淡路島に向かい、南端からさらに船に乗り継ぐと、紀伊水道に浮かぶ「沼島」(ぬしま)に着く…

【大阪中之島美術館 「佐伯祐三-風景としての自画像」】  ③ 《黄色いレストラン》

【大阪中之島美術館 「佐伯祐三-風景としての自画像」】 ③ 《黄色いレストラン》 この《黄色いレストラン》は佐伯の絶筆で、遺言になるのかもしれません。1927年に家族と再度の渡仏を果たした佐伯は、翌春、パリ近郊へスケッチ旅行に出かけ、寒雨の中で…

大阪中之島美術館 「佐伯祐三-自画像としての風景」 ②《ガス灯と広告》

1回目の渡仏で、《壁》を描き、自らのテーマとフラットな画法に自信を持った佐伯祐三。病身を周囲が心配していったん帰国したものの、自分の発見したスタイルへの自負を押さえきれず、逸る心で家族とともに、今度はシベリア鉄道経由で2度目のパリに着きます…

「佐伯祐三-風景としての自画像」展(6月25日まで)大阪中之島美術館

大阪中之島美術館では、昨年2月の待望の開館いらい1周年を迎え、「佐伯祐三-風景としての自画像」展を4月15日より開催しています。佐伯祐三は、1898年、大阪・中津のお寺の次男坊として生まれ、府立北野中学(現北野高校)から東京美術学校に進み…

【牡丹と孔雀~ルネサンスはいかにして日本に伝わったか】

関西ではちょうど牡丹の見ごろなので、牡丹の絵を取り上げてみました。この絵は、《孔雀開屏図》。1758年の作。牡丹やハクモクレンを背景に、孔雀が羽を全開するというおめでたい絵柄です。中華民国の台北にある国立故宮博物院が所蔵しています。 《孔雀…

「この名画はなぜ名画なのか」シリーズ 第②回 ■ミレー《春》

「この名画はなぜ名画なのか」シリーズ 第②回 ■ジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)《春》 「この名画はなぜ名画なのか」シリーズの第2回も、前回の《落穂ひろい》に続いてミレーの、《春》を取り上げてみました。ミレー晩年の最高傑作と言わ…

2023長浜の盆梅展に遊ぶ

どうしてこのように枯れたも同然に見える古木から、みずみずしい梅の花は生まれてくるのか。老いと若やぐ生命の対比。生と死の輪廻――梅の盆栽の古木を見ての感想ですが、何か謡曲の演目を見ているような幻想性も感じます。例えば、ある日、翁が海岸で大きな…