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ビザンチンとは何か。ジオットの才能が、ビザンチンの伝統を壊して創ったものとは?

 

■□■□■   【ルネサンスの名画を訪ねて、イタリアを旅しました②】      ■□■□■   

 

ビザンン美術の世界観を感覚的につかんでいただくため、代表例としてエジプトの修道院に

伝わる「聖母子のイコン」を掲げてみます。ずいぶんと平面的で動きがなく、禁欲的で

すよねえ。これが千年も続いた美術の様式です。なぜこんなことになったかというと、キリスト教の偶像崇拝の禁止、という教義によります。仏教もそうでしたが、宗教がおこって初めの500年位は、神を絵や彫刻などとして表現するのを禁じます。偉大で深遠な神をいじるのは不敬である、という事で。その後、イコンが描かれるようになっても、イコン自身聖性ないシンボルとされたので、個性や新解釈などはむしろ排除され、伝統スタイルでずっと来た訳です

 

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玉座の聖母子 6世紀 聖カテリーナ修道院蔵 シナイ山(エジプト)

 

ところが革命児ジオットは大胆にもその禁を破って、イコンに生命を吹き込んでしまうのです。

もう一度、下の「荘厳の聖母」を見てください。ビザンチンでは動きがなく古拙で平面的だった

世界が、奥行きを持ち、登場人物は生き生きと配置されます。歌舞伎のような力のこもった

眼にも演劇性は溢れて、誰が何をしているのか、すべて明快です。聖母の顔の描き方なども

ちっとも古臭くなくて、胸をはだけた様子はトレンディな感じすらある。もし、ニンバス(光の輪)

がなければ、これは二子玉川あたりを子連れで買い物するヤンママかな、とも見れます(笑)。

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 ジョット・ディ・ボンドーネ 「荘厳の聖母」 1310年 ウフィッツィ美術館

 

ついでながら同じジオットの畢竟の大傑作、「ユダの接吻」です。パドヴァ(ヴェネチアの近く)の「スクロヴェーニ礼拝堂」のフレスコ画。激しくぶつかるこの人間ドラマはすでに現代的です。

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ジオット「ユダの接吻」 1305年頃 スクロヴェーニ礼拝堂

 

ジオットはビザンチンの影響を残しながらも奥行きのある空間を創り出し、実在感あふれる

人間像とドラマを注入することに成功した天才画家です。絵画のコンセプトを大きく書き換え、

ふわりとテイクオフさせた美術史上の功績は、讃えきれないでしょう。さて、ジオットによって

火がつけられたルネサンス絵画は、やがて立体感や写実性をワザとしながら、宗教の呪縛

から次第に抜け出し、人間中心主義ともいえる自由で解放感に溢れる表現へと一気に向か

っていきます。