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ギリシャ美を生み出したのは、プラトン哲学と古代オリンピックだったと僕が断定したその訳は?

  • 特別展【古代ギリシャー時空を超えた旅ー】(神戸市立博物館) その⑤ ■

 

我々の美意識の源流は、一体どこまで遡ればいいのか?まさか、優に1億年以上も昔のアルタミ

ラの洞窟画ではないだろう。旧石器時代のことだもの。我々との連続性は感じることはまず無い。

それなら紀元前2、3千年位の古代エジプトはどうか。彼らの死生観を表す絵や平面的な様式など

は、確かにエスニックで珍重はするのだが、これも何ら近親の血が騒ぐようには思えない。

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 《ク―ロス像》前520年ころ  《アルテミス像》前100年ごろ(紀元前4

                                                        世紀のオリジナルを翻案したもの)

ともにアテネ国立考古学博物館蔵 cThe Hellenic Ministry of Culture And

Sports-Archaeological Receipts Fund

 

やはり我々の美意識は、およそ紀元前5世紀ころに始まったギリシャ美が、地続きと言う意味に

おいて、今日の直接の始源だろう。つまり今から2500年くらい前に我々の美の原型が出来上がり、

今もなおその規範に従っているーーそう考えておくのが健全に思われる。まあ、無くてもいいがそう

いう教養があるだけで、ルネサンスなど西洋美術の流れを俯瞰すれば、絵画や彫刻の楽しみは

遥かに深くなり、快美の念をいや増してくれるに違いないことを断言して置こう。

                  

ところで紀元前5世紀の頃と言うと、僕にはギリシャ哲学の事が思われてならない。美術と同様に、

現代哲学もやはり同時期にギリシャ及びその植民都市で始まっているのだ。ギリシャ人は、ホメロ

スの《オデュッセイア》に代表される長い長い神話的な物語世界の時代からその頃ようやく抜け出

し、人間の精神史で初めて、世界を科学的ともいうべき理性による思考法で捉えようとした最初の

民族だった。

例えば哲学者の元祖とされるターレスは、万物の根源は「水」であると主張した。世界の根源は

「火」であるなどと唱えた哲学者もいた。その当否は別にして、神学でなく、世界を現象の奥にあ

る統一的な原理で解釈しようとしたことは画期的に新しいことだった。有名なソクラテスの弟子プ

ラトンは、この統一的原理を「イデア」と呼び、彼の哲学的根拠としたことは皆さんもご存じだろう。

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アテナイの学堂》ラファエロ 1509-1510バチカン宮殿 中央向かっ

て左が天上を指す理想主義のプラトン

顔はダヴィンチで表現、右はアリストテレス  ※このフレスコ画は展

覧会では見れません、ご注意ください。

 

今でいえば、一種のモデリング思考であるが、目に見えない理想的な絶対原理を求める思考の特

性は、科学や数学を生み出すもととなる。近代知の始まりだ。またこれが美学に応用されると、完

璧な人体の理想美を求めてやまない芸術表現となる。神は人間を、自分たちの似姿としてつくられ

た。ならば、ギリシャ美術における人間もしくは神々は、完璧な比例美をはじめとして、理想の規範

を内包しているべきだ。当時のギリシャの芸術家はプラトンらのイデアの哲学を敷衍して、そう考え

たのではあるまいか。哲学と美術は、同じテーブルで語られることは少なく、僕もまだ、そのような

ギリシャ哲学と美学を関連付ける論考は見たことがないが、両者は関係している、と言うか通婚し

ている。ギリシャ哲学とギリシャ美は夫婦のように一体である。ーー僕はそう断定する。

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赤像式パテナイア小型アンフォラ ボクシング》前500年ころ

アテネ国立考古学博物館cThe Hellenic Ministry of Culture And

Sports-Archaeological Receipts Fund

 さて、プラトン哲学と並んで、ギリシャ美を成立させたもう一つの要因は古代オリンピックであると、

僕は最初の見出しで仮説を提起した。そろそろ古代オリンピックについても語らねばならないが、

紙幅が尽きてしまった。ボクシングをする拳闘士の図柄の焼き物だけ掲げ、オリンピックの話は次

回にさせて頂く(つづく)。

 

■展覧会の会期は、2017年4月2日(日)まで、神戸市立博物館にて。

美術評論家 美術ソムリエ 岩佐倫太郎

 ■後記

わがニューズレターは、1200字を超えないようにしています。ネットだから長くてもいいようなものですが、

やはりコンテンツのてんこ盛りは嫌われる。無料メルマガと言えど、それなりに気を使ってるんです(笑)。