興福寺中金堂再建記念特別展   運慶  東京国立博物館②

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左;国宝《無著菩薩立像》 右;国宝《世親菩薩立像》 奈良・興福寺蔵 写真はともに六田知弘

 

素晴らしさの一端は、誰しも思うこの2体のリアルさ加減だろう。あたかも今の時代に生きている人物のようだ。それは目に水晶を使った「玉眼」(ぎょくがん)の効果も大きい。それ以上に存在の確かさを与えるのは、姿態の造形が我々が見ても解剖学的に正しいと感じさせる点だ。背骨から首の付き方や角度など誠に説得力に富んでいて近代彫刻と何ら遜色がない。我々もロダンドガの彫刻を見るのと同じ目で見ることができる。つまりもう精神が現代と地続きなのである。人間のありのままの姿を、何の虚飾もなくフラットに見つめる眼!ルネサンスが誇ったヒューマニズムや科学精神を、それに先んずる事300年も早く実現している。

平安の仏像の様式美などとは全く違った時代精神で、造形美を創造している点で運慶は実に革新的だ。展覧会は有り難いことに、普段見れないうしろ姿なども仔細に見れる。立体表現に定評のある運慶を味わうには、なかなか得難い環境ではある。省略のきいた背中の衣文の下に窺える分厚い肉体表現や手や顔に浮き出る血管なども見どころ。

リアリズムとは決して現実の引き写しではなく、省略と強調による対象の再創造だと言うことがここでもよく判るのである。

 

会期は1126日(日)まで  公式サイト⇒ http://unkei2017.jp/

※そんな方はいないと思うけど、ダヴィデが上野に来てるわけではありません。誤解なきよう、念のため(笑)。

 

ニューズレター配信  岩佐倫太郎  美術評論家/美術ソムリエ

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