びわ湖リング第3日、ワグナー「神々の黄昏」をライブ・ストリーミングで見る

楽しみにしていた37日、8日の「びわ湖リング」第3日、ワグナー「神々の黄昏」が中止になって、チケットも用意していただけに大落胆。ところが起死回生の大ヒットが放たれた。無観客演奏を行い無料のライブ・ストリーミングで配信が実現したのだ!そのDVDも後日発売されるとか。こういうのを大英断と言うのでしょうか。毎回のことながら、この事業を進めている館や演奏家の皆さんの芸術愛のようなものが伝わってくる。敬意を感じずにはいられない。

f:id:iwasarintaro:20200314150325p:plain公演は1時から2度の休憩をはさんで夜の7時にまたがる長時間。始めは耐えられるかなと半分疑心でPCオーディオで聞いていたが、さすがに音質が気になりだして、別室に移動。大きなスピーカーとアンプにスマホをつないで聞くことにした。第2楽章のラッパが鳴り渡り、2組の結婚式が始まり、コーラスが大笑いするあたりから俄然、ワグナーの物語世界に引き込まれた。演奏の質の高さや集中力の凄さ、自在さが伝わってくる。こちらもそのまま緊張が切れることなく一気に炎が燃え盛る悲劇的終幕までなだれ込んだ次第。

 

ほんとうに感銘を受けるレジェンドな公演だったと思う。日本の歌手たちも初日のハーゲンの妻屋秀和さんや2日目のブリュンヒルデ池田香織さんほか、逐一名前を上げないけれど皆さん素晴らしい実力を示した。もうダブルキャストで外人の人の方がうまいだろうと言った日本のファンの偏見は捨てるべき時期に来ている。また沼尻竜典指揮の京都市交響楽団も去年以上に素晴らしかったのではないか。気合が入っていて、音の輪郭が鮮やかで力強かった。僕は沼尻さんのテンポが好きなのだが、このとき皆ノリのある演奏をしていて、大曲をわがものとして手中に収め、ひとつの物語世界を作り出す自信や喜びに満ちていたように思う。

 

味を占めて翌8日も、休憩時間にワンちゃんの散歩をそそくさと済まして延々7時まで、カーテンコールにいたるまで見ていたが、カーテンコールでは客席に観客がいないので、舞台上に並んだ歌手たちから笑いの声がこぼれて出てきた。でもその声も何だか温かい。音楽ファンや演奏家や運営側の気持ちが、デジタル経由だけれどひとつになった瞬間ではなかったか。ブラヴォ!