(FBのNOTE2016年2月再録)シャープの失敗はかつての日本軍の失敗に似ていないか その1

シャープの失敗はかつての日本軍の失敗に似ていないか その1
 

FACEBOOKが2010年10月でNOTE機能の一般閲覧サービスを停止しました。これでNOTEに書いた投稿は誰にも見てもらえないことになります。残念なので、このHatena ブログに再録して、検索に対応するアーカイブとしました。

 

昨日(20160225)、シャープが台湾の鴻海(ほんはい)傘下に入る決定が発表された。産業革新機構に入るより良かったなあと、歓迎している。大阪市の南で育った僕は、阿倍野のシャープといえば家からも近くなじみのある会社だった。小学校の見学でも行ったことがあり、そこではベルトコンベアの前で白いスカーフを被った女子工員さんがトランジスタラジオか、そのころ出回り始めたテレビの基盤だったか定かではないが、ともかく手作業で黙々とハンダ付けをしていたのを今も覚えている。 そのシャープがついこの前、長池にある本社ビルを売ったと聞いた時には、「そんなに悪かったのか!」と軽いショックを受けたのだが、年明けてビルではなく会社の経営そのものを外資にでも身売りしようかという話に進んできたので、これはいよいよ敗戦も間近かと関心と憂慮の念をもって、推移を気遣っていた次第。                          

 

ところで鴻海の競争相手として登場した産業革新機構についてだが、ご存知のない方もあるかもしれないが、実は株式会社である。政府出資が9割、民間が1割。しかもいざという時は、政府の債務保証が付く。つまり国民の税金で損失を補てんする仕組みになっている。官民ファンドなどというと聞こえがいいが実態は官製ファンドだし、株式会社だと国会に召喚される恐れもない。財界も経産省にお付き合いで出資しているだけのことだろう。こんな株式会社があっていいのだろうか。だれも責任を取らず、失敗したら国民に尻ぬぐいさせればいい、と横柄に考えたのが手に取るようにわかる。本当はなくていい組織なのだ。初代のCEOは農林中金の出身。親方日の丸の代名詞みたいなところからきて、「産業」の「革新」などできるわけがない。国の保護政策に守られてぬくぬくとやってきただけで、国際競争や技術革新の環境下で自分の船を操船したことは一度たりともないのである。さすがにその初代は去って、長らくカルロス・ゴーンの下で日産のCOOを長く務めた志賀さんが2代目CEOに就任したので、少しは社会的な信用は回復したかもしれない。しかし僕の疑念は、日本の産業の後退局面が起きるたびにしゃしゃり出て新会社をこさえたり、技術評価もできないのにベンチャー企業に人の金(税金)を突っ込んだりして、役人の天下りのポストを永続的に製造しようとたくらんでいるのではないだろうね、ということ。いや、この疑惑はたぶん当たっているだろう。従業員150人位らしいが、ともかく胡散臭い会社ではある。               

 

その産業革新機構のシャープ再生案の最大の欠陥は、決して3000億円が少ないというのでなく、販路の計画がない、つまり売る力を持ち合わせていないことだ。結局、ジャパンディスプレイに統合しようが、シャープの各部門は液晶、白物などと切り売りされ、大幅な人員リストラの憂き目にあう。つまり、国際的なロジスティクスを考えないままに、弱者連合を一時しのぎで糾合しようとするだけだ。アップルなど世界的な販路を持つ鴻海の支援策とはそこが違う。初めから成算のない話なのである(つづく)。