みなさま
健やかな休日をお過ごしのことと存じます。小生、ヴェネツィアのルネサンス絵画
を寺院に訪ねる旅から帰ってきました。日本ではつつじが満開、新緑の美しさが
今年はことさらに目に沁みました。さて、京都大学での美術講演会のご案内です。
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日本の浮世絵が印象派を生んだと言う話を講演会ですると、「うっそー!」
と言う反応が返ってきます。でもこれは本当の歴史的事実です。フランス
の文化大臣だったアンドレ・マルローも、「印象派の人々が浮世絵を発見し
たのでなく、若い才能あるフランスの画家たちが浮世絵を見て印象派を形
成した」と言う旨の証言をしています。
所で小生とベルギー在住の美術史家、森耕治先生とのリレー講演も4回目。
去年は、ジャポニスムと印象派の発生の話をしましたが、今年はさらに浮
世絵の影響が時代を下って、ゴッホ、マティス、ピカソにまで及んでいる
ことを多くのスライドでお見せして話をさせて頂きます。
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我々は絵の見方と言うものを学校ではほとんど教えてもらっていないので、
大抵のばあい自己流の好き嫌いで絵を見ておられると思いますが、この辺
のツボを押さえておくだけで、美術展に出かけるときにも、海外旅行で美
術館に行った時も、とても理解が広くかつ深くなり、楽しみが増大します。
例えば僕が今回担当するゴッホのことをここで少しだけご紹介しましょう。
左は《じゃがいもを食べる人びと》1885年。とても暗いですね。間違うと
社会主義リアリズムのような絵です。右は《タンギー爺さん》で1887年。
この色の弾け方や、平面的な表現は、ゴッホがパリに出て、多くの浮世絵に
出会うことで生まれました。その頃のヨーロッパの都市は日本ブームでした。
背後のワッペンみたいにちりばめられた浮世絵は彼の日本への憧れのオマー
ジュです。彼は広重にも傾倒し、《亀戸梅屋敷》などの模写を行っています。
浮世絵の豊かな色彩や遠近法の自在さにゾッコンだったわけです。そのあと、
ゴッホはさらに日本の多神的自然観も学び、宗教的な画境を深め、《星月夜》
のような、宇宙と共振するようかのような畢竟の名作を生みだします。
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とまあこんな話など浮世絵を源として西洋美術が発展したことを、モネやマ
ティス、ピカソなどに即して交替で話させて頂きます。美術ファンの皆さま
にご参加いただければ幸いです。
■美術対談講演会@京都大学時計台
浮世絵で始まる西洋美術
7月15日(日)14時から16時 京都大学時計台・国際交流ホール 100名
■17時からは時計台下にあるフレンチ・レストラン「ラ・トゥール」で
立食パーティを開きます(任意参加で、定員は60名までです)。
■会費 講演会のみ4千円、パーティとも1万円(含消費税)領収書発行
■お申し込みはこのメールにご返信ください。またはiwasarintaro@gmail.com
追ってお振り込みのご案内を致します。
※なおこのシリーズでは、学生招待枠を設けています。学生の方は無料です。
お申し込みください。また収益の一部を京都大学基金を通じて「山中伸弥
先生のIPS細胞研究」に今年も寄付したします。
美術評論家/美術ソムリエ 岩佐倫太郎