2018-01-01から1年間の記事一覧

ピカソも驚嘆させたアンリ・ルソーの楽園画。彼は役所に勤める日曜画家だった

この絵の前に立った人は、画面いっぱい滴るように横溢する緑の分量感の心地よさをまず感じるだろう。僕などもこのところバロック絵画の、黒々とした演技過剰な絵について、あちこちで解説してきたものだから、こんなシャープな緑の色のそよぎに出会うと、ま…

マティスと並ぶ野獣派(フォービスム)の旗手、ドランにも浮世絵の影響は見られる。

大阪・中之島の国際美術館で開催されている「プーシキン美術館展」。春に東京上野の都立美術館で開かれていたのが、巡回してきた。ロシアの詩人にして小説家の名を冠したモスクワの美術館が持つ、印象派やポスト印象派などを中心にした見ごたえある優品が並…

印象派は浮世絵から始まった、という驚きの事実はもっと知られてよいだろう.

この5年くらい僕は、浮世絵が印象派を生んだと言う話を、京都大学やNHKカルチャーセンターなどで語ってきました。 それは決して自国文化への贔屓の引き倒しではなく、日本の優秀なビジネス・パースンやこれから美術を楽しみたい シニアの方々に、東西の美術…

「浮世絵が印象派を生んだ」、と言うとエッ!と驚かれる方もいる。

この5年くらい僕は、カルチャーセンターや京大などでの講演で、「浮世絵が印象派を生んだ」ことを語り、ゴッホやマティスにもつながる西洋美術の源流が、浮世絵に有ることを話してきました。始めインテリの人ほど疑わしそうな顔をされたんですが、この一年く…

■祇園祭の山鉾に、ギリシャ神話を見た! (その3 完結編)

いったい僕はなぜ祇園祭の《ヘクトールとアンドロマケ》に、かくもこだわっているのか。それは、イタリアの画家キリコの描く同名の絵画に、以前から惹かれてならないからだ。下の絵がそれで、ギリシャに生まれ育ち、アテネで教育を受け、シュルレアリスムに…

■祇園祭の山鉾に、ギリシャ神話を見た!(その2)

さて、《ヘクトールとアンドロマケ》は何処に?我ながらご苦労な事ではあるが、そのタペストリーを探して超炎天下、御池から裏道を先頭の「長刀(なぎなた)鉾」のいる四条までいったん出て、そこから逆に戻るようにしてみた。長刀鉾は「くじ取らず」といっ…

■祇園祭の山鉾に、ギリシャ神話を見た!(その1)

1か月にわたる祇園祭が続いている京都だが、なんといってもハイライトは前祭(さきまつり)の山鉾巡行だろう。7月17日(火)、恒例の「祇園祭連歌会」への出席を兼ねて山鉾見物に出かけた。今年の目的は、ギリシャ神話の《ヘクトールとアンドロマケ》のタピ…

浮世絵とセザンヌ、マティスをつなぐ糸が見えて来た!

ゴッホは広重を模写するまでに浮世絵を崇拝し、その影響を受けて自分の暗い画風を一挙に官能的な色彩の世界に弾けさせました。さてもう一人、北斎の浮世絵を研究し、その創作原理を密かに取り込み、自分の画風を確立した画家がいます。それがセザンヌです。…

【この顔にピン!と来たら、美術ファン】

下の3点のポートレートは、一見何の関係も無いように見えるかもしれませんが、実は一本の太い美術の潮流でつながっています。はじめ極東の小島で発生した版画による浮世絵。これらが日本の開国と共に西洋に流れ込んだとき人々は感嘆の声を上げました。ルネサ…

【マティスはゴッホの色彩をどのように革新したのかーー京都大学講演会にちなんで

20世紀の美術界にはピカソと並ぶ天才とされるマティスがいます。色彩の魔術師と言われたマティス、色彩の遺伝子をゴッホから存分に受け継ぎ、そのゴッホは浮世絵に激しくインスパイアされて自分の色の世界を一変させました。この辺はもう皆さまよくご存知の…

ゴッホの色彩はマティスに伝播したーー7/15(日)京都大学講演会にちなんで

読者の皆さま。以下は、京都大学時計台の講演会を7月に控えて、メールによる事前レクチャーを 兼ねています。お申し込みの方以外も気楽にお読み頂ければ幸いです。これはその3回めです。 ゴッホがパリに出て、浮世絵に出会って翻然と自己変革を遂げ、後世、…

岩佐倫太郎ニューズレター【京都大学講演会◆浮世絵で始まる西洋美術◆ごあんない】

読者の皆さま 京都大学での美術講演会のごあんないと、メールによる講演内容の事前講座です。 左はもうご存知でしょう。ゴッホがパリに出てから描いた《タンギー爺さん》。爺さんと は変な呼び方ですが、親しみを込めて「タンギーの親父さん」とでも訳すべき…

■ゴッホの自然観は、一木一草に宇宙の生命を感得する日本的な哲学と通じていないか?■  

前回、ファン・ゴッホの拳銃による自死は、死ぬことによって普遍を獲得し、永遠を生きようとする ――ヨハネ福音書における麦の粒のように――殉教的行為であると言う自説を開陳させ て頂きました。もし、そうであれば、またもや発想が飛躍すると言われるかもし…

岩佐倫太郎ニューズレター【京都大学講演会◆浮世絵で始まる西洋美術◆ごあんない】1805 NO.195

みなさま 健やかな休日をお過ごしのことと存じます。小生、ヴェネツィアのルネサンス絵画 を寺院に訪ねる旅から帰ってきました。日本ではつつじが満開、新緑の美しさが 今年はことさらに目に沁みました。さて、京都大学での美術講演会のご案内です。 ● 日本…

絵画のコレクターで財力と審美眼を兼備する人は珍しいが、ビュールレはその稀有な例外だろう

東京・六本木の国立新美術館に、「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」が来ています。絵の説明に入る前に、このたぐいまれな審美眼とお金儲けの才能を兼備した人物のことを書いておきましょう。エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956年)はドイ…

左下の《肖像》を見て感じるのは、嫌悪?興味?森村泰昌の作品は、身体を賭したゴッホ批評だ。

京都国立近代美術館での「ゴッホ展」は終わってしまいました。見どころの多い企画展で、僕もゴッホの画法の変遷や宗教観を考察する機会を得て、充実した余韻がまだ残っています。しかしながら、なおもニューズレターに書き残した気がかりが一つある。それは…

ゴッホの自画像は、隠されたイエス・キリスト像である、と言うと驚かれるだろうか

ことのほか自画像を好んで描いたゴッホ。いま試しに、ファン・ゴッホ美術館公認のウェブ・サイトで数えてみると、全部の油絵作品の約860点のうち、自画像はなんと32点!ことにパリに出て来た翌年の1887年は、集中的に自画像を描いています。モデルを雇うお金…

ジャポニスムの巨匠、ゴッホ。単なる異国趣味を越え、深い日本の精神を理解した画家だ

江戸の人々が好んだものは、花見に旅行、そして芝居、風呂。まあ、なんとも羨ましいリタイア後の理想のような生活を、皆がしていたんですね。6人に一人がお伊勢参りに出かけたという記録もあります。大した現金収入や貯金があったとは思わないのに・・。200…

ゴッホの《種まく人》の「種」とは一体何なのか?僕の推理は、あまりにも奇説に過ぎるだろうか

気になって来た疑問は、秋に行うべき小麦の播種を梅の咲く春に行った絵を描いて可笑しくな いか、と言うこと。それに対する考えのひとつは、この梅は単にコラージュだから、季節が不整 合でも構わない、梅は春、小麦を播くのは秋、別に絵だからいいじゃない…

ゴッホの《種まく人》の種とはいったい何なのか?名画の中の「種」を巡って、僕の疑問は尽きない

最初にお断りですが、左下のミレーの《種まく人》は、今回の国立近代美術館の「ゴッホ展――巡りゆく日本の夢」には来ていません。話を進める都合上ボストン美術館の画像を借用して掲出したもの。時々間違って、「無かったじゃない」とおっしゃる方が居るので…

ゴッホ版の《種まく人》はいかにして誕生したのか。興味尽きない創作のプロセスと背景を追う

京都の平安神宮に近い国立近代美術館で開催されている「ゴッホ展――巡りゆく日本の夢」。 僕が一番気に入ったのは、この《種まく人》。じぶんでは珍しく複製画まで買ってしまいました。 《種まく人》1888年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・…

ゴッホは浮世絵に出会って変革し、自分の才能を作り上げた。起点はこの梅の花

平成30年の節分の日、京大系のシンクタンク「21世紀日本フォーラム」の講演会に呼ばれ、スピーカーの一人としてしゃべってきました。この団体は、歴代の政権に外交や金融政策などを提言してきた伝統ある言論人の集まりですが、この日は新年会と言うこともあ…

あけましておめでとうございます。 平成三十年元旦

読者の皆さま、すがすがしい新年をお迎えのことと、お喜び申し上げます。 この1年が戦争など起こらない平和な年になることを、切に願っています。 家の近くの清荒神清澄寺。久しぶりにサインペンを使わず鉛筆で人物を描きました。 小生去年は、美術の世界で…