2021-01-01から1年間の記事一覧

【メトロポリタン美術館展④最終回 セザンヌ 《リンゴと洋ナシのある静物》】

【メトロポリタン美術館展④最終回 セザンヌ 《リンゴと洋ナシのある静物》】 大阪展は来年1月16日まで。東京展は2月9日から。国立新美術館(六本木)で。 左は青い洋梨、右には赤い林檎が机に無造作に置かれている。何という事は無い、画家の故郷の南仏のあ…

【メトロポリタン美術館展③ ブーシェ 《ヴィーナスの化粧》】

【メトロポリタン美術館展③ ブーシェ 《ヴィーナスの化粧》】 フランソワ・ブーシェ(1703-1770)は、18世紀のフランス王宮が生んだロココ様式を代表する画家です。今回日本で展示されている《ヴィーナスの化粧》は、ブーシェの作品群の中でも、とりわけ優…

【メトロポリタン美術館展② カラヴァッジオ 《音楽家たち》】

【メトロポリタン美術館展② カラヴァッジオ 《音楽家たち》】 講演などのあとでよく、「ルネサンスとバロックはどちらが古いんですか?」と質問を受けることがあります。知っている人には当たり前すぎることかも知れないですが、ルネサンスが先でそれにバロ…

【メトロポリタン美術【メトロポリタン美術館展① ティツィアーノ 《ヴィーナスとアドニス》】

【メトロポリタン美術館展① ティツィアーノ 《ヴィーナスとアドニス》】 大阪・天王寺の市立美術館に、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する西洋絵画の名品65点がやって来ています。うち46点は日本初公開。東京は来年2月からです。「西洋絵画の500…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑧――最終回】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑧――最終回】 1901年に始まったノーベル文学賞の歴史を遡ってみると果たして、幻想や虚構の文学は意図的に排除されて来たことが判明する。戦前では「変身」のカフカを始め、プルースト、ジョイスら現代文学の…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑦-条件の欠格?】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑦-条件の欠格?】 ノーベル文学賞は、一冊の著作に与えられるものでなく、長年にわたる文学活動に対してのいわば功労賞だ。世界の多文化、多言語の中から一人を選ぶとなると、選ぶ側も相当なコンセプトと言…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑥-ボブ・ディラン】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑥-ボブ・ディラン】 結論に進む前に、ボブ・ディラン(1941~)について少し触れておこう。2016年のノーベル文学賞の受賞者である。フォーク・ロック界の世界的なレジェンドではあるが、文学賞が音楽家に与…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑤-第3潮流とは】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑤-第3潮流とは】 「オリエンタリズム」と言う言葉がある。耳慣れないかもしれないが、エドワード・サイードと言うパレスティナ生まれのアラブ人で米国在住の文学批評家が、1978年に同名の著作を発表した。要…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか④】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか④】 もう多くの読者もお気づきのように、第一潮流の「神の不在と人間の実存」の課題は、じつは答えは無い。答えのないものをいつでも四六時中、考えているのも疲れる。その時、スウェーデン・アカデミーのノ…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか③】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか③】 ルネサンスで神の絶対性は揺らいだ。ここから西洋人の、「神離れと目覚め」の精神史が始まる。17世紀になるとフランスの哲学者、デカルトはこう言った。「われ思うゆえにわれあり」――まだ神を全否定す…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか②】 211016

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか②】 211016 カミュの「ペスト」は、ヨーロッパにも大惨劇をもたらした第2次世界大戦の暗喩とも読める。ノンフィクションのように錯覚しがちだが、ペスト自体はこの200年ほど、ヨーロッパで流行した事実はない…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか①】 211011

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか①】 211011 今年も村上春樹がノーベル文学賞を逃した。お昼のニュース番組ではコメンテーターたちが、「いや、彼はまだ世界の文壇に出て20年にしかならず、年季が浅いですから」などと評論しているのを聴きな…

【ショパン・コンクール、1位リウは舞踏派、2位反田は武闘派】

【ショパン・コンクール、1位リウは舞踏派、2位反田は武闘派】 もう結果はご存知の方も多いだろう。ショパン国際ピアノ・コンクールの1位はカナダのブルース・リウだった。僕の独自予想ではリウを2位グループにランクしていて、反田恭平が優勝候補のイチ押し…

【ショパン・コンクール 反田恭平が2位  岩佐の予想と結果はいかに】

(21021年10月22日にFBに投稿したものです) 【ショパン・コンクール 反田恭平が2位 岩佐の予想と結果はいかに】 ショパン・コンクールの最終結果が出た。昨日は一日忙しくて、気にはなっていたが敢えて見ないようにしていた。反田恭平や小林愛実の日本勢…

【2021 ショパン・コンクールの入賞者を占う】

(これは2021ショパン国際ピアノコンクールでファイナリストたちの最終結果が発表される前日の10月20日に、自分の予想を書いたものです) 【ショパン・コンクールの入賞者を占う】 タイガースの優勝は相当厳しくなったが、ピアノの世界で僕が優勝を期待して…

【ビル・エバンスのドキュメンタリー映画を見る1/2】

【ビル・エバンスのドキュメンタリー映画を見る1/2】 2019年のFBへの投稿を再録しています。 マイルスがかくも必要としたビル・エバンスだったが、マイルスの元を去り、自らのトリオを結成する。離れた理由はジャズという黒人社会で白人への逆差別があったと…

【ビル・エバンスのドキュメンタリー映画を見る1/2】

【ビル・エバンスのドキュメンタリー映画を見る】 2019年7月 友人たちのFBの投稿に教えられて、ふだんめったに映画に行かないのに先日、朝早く梅田のシネコンに出かけた。ビル・エバンスのドキュメンタリー映画「Time remembered」を見ようと言うのである…

【カルメンは如何にしてカルメンになったか 2/2】

【カルメンは如何にしてカルメンになったか 2/2】 元の小説を書いたメリメは、パリの富裕な家庭の出身で官吏としてもナポレオン3世の重臣となり、文化財建築の保全に力を尽くし、考古学者でもあった作家でした。語学にも堪能で、古代ギリシャ語からスペイン…

【カルメンは如何にしてカルメンになったか 1/2】

【カルメンは如何にしてカルメンになったか 1/2】 19世紀のフランスの小説家プロスペル・メリメ(1803-70)が、3度にわたるスペイン旅行を経て、小説「カルメン」を書いたのは1845年の事です。2年後には、ジプシーの考察を第4章として新しく加え、今の体裁に…

【オペラ日記② びわ湖ホール カルメン】2021年8月

【オペラ日記② びわ湖ホール カルメン】 去年のびわ湖ホールは、ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」のシリーズ最終年にあたり、「神々の黄昏」が予定されていた。指揮は同ホールの芸術監督でもある沼尻竜典で、僕もチケットを入手して心待ちに期待して…

【オペラ日記】メリー・ウィドウ 2021年8月@兵庫県立芸文センター

【オペラ日記】 趣味のオペラ鑑賞も、昨年いらいのコロナ禍で機会が限られる。CDなどを聞いて無聊を慰めていたが、ようやくライブに出かけられたのは昨年末、シンフォニーホールで行われたガラ形式の「紅白オペラ合戦」。関西財界が文化振興にと例年力を入れ…

ショパンのピアノ・ソナタ第2番を聞き比べる(2018年2月FBのNOTE投稿分を再録)

ショパンのピアノ・ソナタ第2番を聞き比べる 【ノート◆ショパンにまつわる長文】2019・02 2015年の、つまり最新のショパン・コンクールの優勝者である、韓国人ピアニスト、チョ・ソンジンの今年1月のシンフォニー・ホールでの公演には、僕も忘れがた…

恩田陸 「蜜蜂と遠雷」を読む (2016年FBのNOTEに投稿)

【音楽NOTE】特急を高松で「いしづち」から「うずしお」に乗り換え、徳島に住む母のところに向かう。ローカル線の旅。缶ビール片手に小説を読んでいると、50年も前の学生だった時代の気分がよみがえる。 今回の旅の友にした小説は、「蜜蜂と遠雷」。恩田陸…

(2016年5月FBのNOTEを再録  )シャープの失敗はかつての日本軍の失敗に似ていないか  その2

(2016年5月FBのNOTEを再録 )シャープの失敗はかつての日本軍の失敗に似ていないか その2 2016年5月2日の投稿再録 産業機構の案を見て、実はこれはシャープがやってしまった失敗をまたしても繰り返そうとしていることに気づかざるを得ない。日本のエリート…

(FBのNOTE2016年2月再録)シャープの失敗はかつての日本軍の失敗に似ていないか その1

シャープの失敗はかつての日本軍の失敗に似ていないか その1 FACEBOOKが2010年10月でNOTE機能の一般閲覧サービスを停止しました。これでNOTEに書いた投稿は誰にも見てもらえないことになります。残念なので、このHatena ブログに再録して、検索に対応するア…

Maria Callas マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ  その3(最終)2015年5月FACEBOOKのNOTEの再録

Maria Callas マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ その3(最終) 歌舞伎などでもそうだが、舞台を締めるには悪役が良くなければならない。存在感たっぷりに憎々しいまでに悪の論理を振りかざし、非道な凄みある行動をする役柄が必要だ。そうしないとお姫様…

Maria Callas マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ  その2

Maria Callas マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ その2 彼女との運命的な出会いは、忘れもしない僕が29歳の夏、琵琶湖でのことだ。ヨット仲間と前夜からいつものロッジに泊り込んでいて、朝ラジカセをつけると、高音域の女性の歌声が流れ出てきた。その…

(2015年のFBのNOTEを再録)Maria Callas マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ  その1

Maria Callas マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ その1 家の近くの駅ビルに、5スクリーンの小ぶりなシネコンが入っていて、まあハリウッドの娯楽大作のようなものはやらないが、文芸路線と言うか、渋めのプログラムを組んでくれるので重宝している。先日…

(FBの2015年2月の記事を再録)Note; 生牡蠣を食らう(ちょっと長いです)

Note; 生牡蠣を食らう(ちょっと長いです) この前の土曜の朝、いつもより遅めに起きてお茶を飲みながらTVを見るとも無く見ていると、おなじみの旅番組をやっている。松田聖子のもと旦那が司会して、食べタレだか旅タレだかがレポーターをしているヤツ。今回…

(FBのNOTEから再録 2014年の記事)■庭園NOTE■ 徳島城の池に、幻の巨大魚を見た

■庭園NOTE■ 徳島城の池に、幻の巨大魚を見た。 90歳になる僕の母親が故郷・徳島のケアハウスにいて、月に1,2度は訪ねることにしています。 先日、たまたま帰りに少し時間があったので、かねて気になっていた徳島城へ立寄ってみました。 蜂須賀藩の城で…