古墳の公園に、江戸の花菖蒲の伝統を見た—奈良県営馬見丘陵公園

■古墳の公園に、江戸の花菖蒲の伝統を見た—奈良県営馬見丘陵公園■

 

この前の週末、奈良県営の馬見丘陵公園に出かけました。広大な園内は古墳もいくつもあって、樹木の立ち姿も美しいのが多く、歩きがいがあります。もと会社の先輩のフェイスブックの投稿に教えられ、奈良に住む友人夫婦と一緒に行ったのですが、ちょうど花菖蒲が見ごろでした。あでやかなバリエーションの数々に、江戸時代の殿様の純で屈託のない、珍貴を好む美意識を僕もまた時代を超えて味わったような気がしたものです。

中でも下の写真の涼しげな色の花菖蒲は自分で撮ったもの。花弁に白い色が混じり、そのせいか、いくつもの品種が群生する菖蒲園の中でも、ひときわ鮮やかで、一番のお気に入りでした。

■古墳の公園に、江戸の花菖蒲の伝統を見た—奈良県営馬見丘陵公園■

 

 

この前の週末、奈良県営の馬見丘陵公園に出かけました。広大な園内は古墳もいくつもあって、樹木の立ち姿も美しいのが多く、歩きがいがあります。もと会社の先輩のフェイスブックの投稿に教えられ、奈良に住む友人夫婦と一緒に行ったのですが、ちょうど花菖蒲が見ごろでした。あでやかなバリエーションの数々に、江戸時代の殿様の純で屈託のない、珍貴を好む美意識を僕もまた時代を超えて味わったような気がしたものです。

 

中でも下の写真の涼しげな色の花菖蒲は自分で撮ったもの。花弁に白い色が混じり、そのせいか、いくつもの品種が群生する菖蒲園の中でも、ひときわ鮮やかで、一番のお気に入りでした。

下の浮世絵の画像は、広重の《堀切の花菖蒲》。思い切りロー・アングルにして水平線を下げ、花の魅力をアップで強調しています。同時に墨田川分流の湿地の広大な広がりを表現するのに、まるで広角レンズのような誇張された遠近感で描いています。面白いのは花の茎の向こうに点在して見える人の姿です。漫画的な筆のタッチですが、人々が花見をする姿は平和で今も昔も変わらないですね。ところで江戸後期の日本は、訪問した外国人が驚くほどの園芸王国で、庶民から、旗本、大名に至るまでこぞって、朝顔や万年青(おもと)、菊などの改良に夢中になり、品評会で高い値段が付くなど、熱狂してバブルの様相を呈したこともありました。

 

広重 《名所江戸百景の内 堀切の花菖蒲》  ゴッホ 《アイリス》 1889

 

さてもう一点、荒々しいタッチのアイリスの絵はご存じゴッホです。なくなる前年の作品。アイリスは乾燥地を好むので花菖蒲とは生育条件が少し違いますが、面影は間違いなくパリで見た浮世絵の花菖蒲でしょう。ゴッホは日本趣味をここでも発揮しています。

この日、園内を1万3千歩、歩いて帰宅しました。

 

岩佐倫太郎 美術評論家/美術ソムリエ