タイガース・ファン必見!《虎図襖》重要文化財 大阪中之島美術館 長澤芦雪展

【タイガース・ファン必見!《虎図襖》重要文化財 大阪中之島美術館 長澤芦雪展】

 

長澤芦雪筆 重要文化財《虎図襖》和歌山 無量寺・串本応挙芦雪館


画像は重要文化財の《虎図襖》(とらず ふすま)。題名通り虎の絵を、墨で襖に描いた大作ですが、作者は長澤芦雪(ろせつ)。ちなみに高さは1間ですから180cmはあります。芦雪の名は知らなくても、師匠が写実派の元祖の円山応挙、と聞けばハハンと納得される方も多いかもしれません。芦雪は江戸時代の中期、京都で名高かった応挙一門の、一番弟子。20歳代から画才は知られていました。

その弟子がまだ若い33歳の時、師匠の特命を受けて、今の和歌山県の串本に向かいます。津波で損壊したお寺の再建がなされたとの報せを受け、かねて応挙と住職が約束した、襖絵をお祝いに描くためです。

芦雪は南紀の地がよほど気に入ったのか、それとも都を離れ、師匠のいないところで羽を伸ばせて楽しかったのか知りませんが、このとき5か月にわたって滞在し、自由に旺盛な筆を振るいました。その作品がこうして今も残って、日ごろは無量寺というそのお寺に収蔵されているのが今回、大阪にやって来たわけです。

和歌山 無量寺本堂 虎の間 ふだんは拝観することが出来ないとのこと 虎の絵は超高精細なレプリカです本物は同じ敷地の串本応挙芦雪館で見ることができます


上の写真は少し前に、現地の「本堂」を特別に取材撮影させてもらった時の内部風景です。絵は超高精細なレプリカ。本物の重文の方は境内にある「串本応挙芦雪館」で管理されて、来訪者は誰でも見ることができます(ただ本堂内部は、特別な場合を除いて一般公開はしていないとのことで、こんご串本まで直接出向かれる方は、そのおつもりでお願いします)。

さて作品を実際に美術館で見ると、巨大なひとコマ漫画のようで、形態の把握が剣の名人のように簡潔で力強い。今にも飛び出してきそうです。それでいて虎は決して怖いわけでなく、むしろ猫のような可愛げを備えているのを誰もが見て取れると思います。絵に詳しい人なら、師の写実主義とはずいぶん違うじゃないか、と感じる方もいるかもしれません。実はその辺が芦雪の真骨頂で、写実も師匠と同等かそれ以上にも描ける。

長澤芦雪 《鷹図》部分 個人蔵

 

その精密な写生の例が《鷹図》です。飛び立とうとしています。気品も精細度も申し分ありません。我々が驚くのは、そうでありながら同時に、虎の漫画のような屈託のない、遊び心に満ちた絵も得意としていることです。どちらにも共通するのは、静止画なのに次の動きを予期させるような、動画の中のひとコマのような運動のエネルギーを凝縮させていることです。

僕は改めて芦雪にも、平安時代の《鳥獣戯画》に始まる日本の漫画文化の伝統が脈々と流れているのを感じます。江戸後期の北斎も漫画的ですし、戦後の手塚治虫の《鉄腕アトム》などもそうで、日本人は輪郭線で形態を素早く再現して、想像力に富んだ物語を作るのが得意です。今日のわが国が得意とするアニメ文化なども、この作品とずっと地続きなことを改めて感じました。

※大阪中之島美術館の「芦雪展」は、2023年10月7日から開催中。前期と後期で展示作品の入れ替えがあります。虎の絵は前期、11・5まで。後期は伊藤若冲の「象と鯨」を描いた大型屏風が登場します。これもまだの人は必見!12月3日まで。

 

岩佐倫太郎 美術評論家/美術ソムリエ

FM宝塚のラジオ番組に出てきました。宝塚中央図書館での小生の「11・4講演会」の告知を兼ねて落語家、笑福亭瓶吾さんとMCのMioさんをお相手に30分。美術談義や僕の宝塚への思いを語りました。動画も撮って同時にネット配信しています。

(422) 2023/10/13 笑福亭瓶吾と愉快な仲間たち【笑福亭瓶吾・mio】 - YouTube

僕が出てくるのはタイマーの2時間30分から(音もここから出ます)。