俳句ファンは多いが、歌仙(連句)となるとたちまち嗜む人は少なくなってしまう。
五七五の長句に七七の短句をつけて、これを繰り返しながら複数人で36句を詠む。
マイナーな趣味に見えるかもしれないが、芭蕉さんの江戸時代はこちらが本流。
俳句はこの発句が独立したものとされるが、明治以降に子規や虚子が始めたもの。
僕らは複数の座衆が共同で掛け合いながら、一つの物語を紡ぐ、まあいってみれば究極の娯楽に魅せられ、30年以上遊び続けている次第。
以下の記録は岩佐水澄子が,俳友の高橋千面鬼さんを師匠に、もっぱらネットのみでやり取りして巻き上げたもの。
2人でやっているので(両吟)、一度に2度づつ読んでいる。
宗匠;高橋 千面鬼、執筆;岩佐 水澄子 2013年1月~3月
初折表
発句 冬 初空に西洋凧の唸りけり 水澄子
(別案 初釜やはじける炭もめでたかり 水)
脇句 冬 糸つむぐ手に冬日あたたか 千面鬼
雑 したしたと山を越え来る気配して 鬼
雑 よみがえる者 汝が名 名のらね 水
月・秋 門固く閉ざす関屋に夜半の月 水
(初案 忘れじの都思えば夜半の月 を巻き上げ後、相談の上改定)
秋 明けゆく空に映えるもみじ葉 鬼
初折裏
秋 晩秋の海漫漫と轟けり 鬼
雑 やくざ映画を新宿で見て 水
( 別案 孤舟の漁翁 峡(かい)を過ぎゆく 水 )
雑 神社では唐十郎の紅(あか)テント 水
( 別案 革命を信ずるや否や君は問う 水 )
恋・冬 星影のワルツ愛(かな)しき冬の宿 鬼
恋・雑 冷えた鏡をきゅきゅと拭く女(ひと) 水
恋・春 あめの下 生きとし生ける田螺(たにし)鳴く 水
月・春 宵は朧に真秀ら(まほら)なる月 鬼
春 村正の匂に春の蝿落ちて 鬼
春 つい くらくらと 白酒に酔う 水 花・春 遠山の花見ん駒に鞍や置け 水
雑 都々逸ならば烏殺さん 鬼
名残折表
夏 青すだれ折り目正しき人なりき 鬼
夏 主君の汚名に耐えて ふた夏 水
雑 おのおの方 かかりませい!と討ち入りぬ 水
雑 ここぞと攻める割打ちの銀 鬼
秋 雷影に さばしる闇の無常かな 鬼
秋 露と置く身も あはれ知る秋 水
秋 湖に続く花野の峠道 水
春 いほりの端に柳あおめる 鬼
恋・春 後朝(きぬぎぬ)の夢は遥かに霞立ち 鬼
恋・春 恋に生まれて 死ぬ蝶々かな 水
(別案 恋・春 卒塔婆小町となるぞ口惜し 水 )
月・秋 墨染めの衣片敷 夜半の月 水
秋 沢くだりゆく かえで追う鴫 鬼
名残折裏
秋 和田塚に 虫すだく魔の霧笛して 鬼
雑 甘味処に女人 群れたり 水
雑 山焼きの焔(ほむら)連なり春迎え 水
花・春 便りなつかし 山里の花 鬼
春 この度も うらら潮路を謝しながら 鬼
挙句春 沖の白帆に風孕む見ゆ 執筆(水)