キッズプラザ大阪、入場1,000万人突破ー1997年の開館から25年で

大阪市北区にある博物館「キッズプラザ大阪」が11日、開館から来場者1000万人を達成した——これは毎日新聞が2022年12月15日の朝刊で報じた記事の最初の1行です。子供の博物館、キッズプラザは天満の関西テレビと同じビルにあって、関西の方ならご存じの方も多いかと。出来たのが1997年、なので毎年平均40万人が入場した計算になります。コロナ禍で1日の来場者が12人などといった苦難の時期もあったようですが、4分の1世紀も存続し、来館者が累積1千万人の大台に乗ったのは快挙と言ってもいいでしょう。まことに喜ばしいです。
 実はこの博物館の仕事は、僕が広告会社の時代に担当したものです。大阪市のコンペがあって我々のチームの案が1位になり、展示物の設計から施工管理、運営計画まで5年間、チーフとなって多くの仲間と携りました。目玉はオーストリアの建築家、フンデルトバッサーによる「子供の街」です(下の写真)。
このシンボル空間が生まれたのは、ビルを設計した安井設計が、「多分、必要だろう」とあらかじめ天井の高い25メートル角の「吹き抜け」を準備しておいてくれたのがきっかけです。図面を見せられて僕もピンと閃めくものがあり、かねて仕事をしたかった意中のウィーンの建築家を手紙で口説いて、「子供が時間を忘れて自由に遊べる巨大な遊具空間にしてもらいたい」と発注したのが実現したものです。
今だから言ってもいいと思いますがこの時、この吹き抜け空間に流行りのライド・シミュレーター(揺動装置)を入れるようにと、プロデューサーをする僕のところに多くの圧力がかかりました。ただそうするとすぐに陳腐化するのは目に見えています。USJが間もなくやってくるのも分かっていました。それで逆にアナログに徹し、ハイテク装置を断固拒否して、子供が自分の体を使って遊べる創造的な空間づくりを選んだ次第。
かねて僕のなかには、「今の子供は本当に幸福なんだろうか?」という疑問がずっとあって、受験やお稽古事に縛られ、生活時間が細切れで管理されて、早く大人になるのを促進されるなら、物質的に豊かでも実は不幸なのではないかとの思いもありました。子供は子供の時間を生きて、遊びを通じて自己信頼を形成することが必要だとも感じていました。
それで館の理念を、「SENSE OF WONDER」とさだめ、「驚きのこころ」と日本語をつけました。知識を与える前に、感受性や好奇心を育てようということです。実は我々の住む世界はこんなにも不思議と美しさに満ちているよ、と博物館の展示に触れることを通じて伝えたかったのです。
千万人が達成されたとき、キッズのスタッフから聞いて僕がいちばん嬉しかったのは、館が出来上がったころに来てくれた小さな女の子が、今はお母さんになって今度は自分の子を連れて遊ばせているという話でした。
下はフンデルトバッサーによるキッズプラザのシンボル空間、《子供の街》