この名画はなぜ名画なのか① ミレー

これまで小生の記事は、その都度の美術展をとりあげ、絵の見方を提供してきました。今年はそれに加えて、「テーマをもった美術シリーズ」を配信します。最初のテーマは、「この名画はなぜ名画なのか」。例えばダ・ヴィンチの有名作品でも、「教科書に載るく…

新年おめでとうございます。

皆さまの健やかな一年をお祈りします。 おなじみの鳥獣人物戯画ですが、見ているうちに、これって絵馬にならないかと思い始めました。願いは平和。動物たちが笑い転げて心行くまで遊ぶ姿は、実は人間にとっても理想郷でしょう。生物多様性(=ダイバーシティ…

キッズプラザ大阪、入場1,000万人突破ー1997年の開館から25年で

大阪市北区にある博物館「キッズプラザ大阪」が11日、開館から来場者1000万人を達成した——これは毎日新聞が2022年12月15日の朝刊で報じた記事の最初の1行です。子供の博物館、キッズプラザは天満の関西テレビと同じビルにあって、関西の方ならご存じの方も…

佐渡オペラ プッチーニの「ラ・ボエーム」➂こんな凄い美術・演出家は誰? 

➂こんな凄い美術・演出家は誰? 今回の「ラ・ボエーム」の美術家は、背景には印象派の名画のようなホリゾントを配して奥行きを深く、オペラの世界観を見事にキメています。これはもしかして引用した「元絵」があるのではないか。そう推理して僕は模型の背景…

佐渡オペラ プッチーニの「ラ・ボエーム」② 舞台美術にもブラヴォー!

②舞台美術にもブラヴォー! この近年、僕が見たオペラの舞台の中で、今年7月の「ラ・ボエーム」ほど美術と演出が心に届き、深い満足をもたらすものはありませんでした。その美術セットのミニチュア模型が劇場のフォワイエの片隅に展示してあるのを幕間に気…

佐渡オペラ プッチーニの「ラ・ボエーム」① 日本の歌手たちが素晴らしい

① 日本の歌手たちが素晴らしい 兵庫県立芸術文化センターは佐渡裕芸術監督がプロデュースするオペラ・シリーズを長年続け、近年でも、「メリー・ウィドウ」(レハール)、「椿姫」(ヴェルディ)、「フィガロの結婚」(モーツアルト)など心に残るプロダクシ…

古墳の公園に、江戸の花菖蒲の伝統を見た—奈良県営馬見丘陵公園

■古墳の公園に、江戸の花菖蒲の伝統を見た—奈良県営馬見丘陵公園■ この前の週末、奈良県営の馬見丘陵公園に出かけました。広大な園内は古墳もいくつもあって、樹木の立ち姿も美しいのが多く、歩きがいがあります。もと会社の先輩のフェイスブックの投稿に教…

「白」の反逆――ユトリロや藤田嗣治が試みた色の挑戦

5月27日の大阪中之島美術館における小生の美術講演会は、定員100名の聴講者と8名の美術館関係、メディア関係者をお迎えし、好評裡に終えることができました。感染対策のための人数制限で、心ならずもお断りした方には申し訳ありませんでした。ご参加…

ルネ夫人2態――モディリアーニとキスリングが描き分けると、こうなる

■ルネ夫人2態――モディリアーニとキスリングが描き分けると、こうなる■ 待望久しかった大阪中之島美術館の開館。満を持しての第2弾は、「モディリアーニ」です。館所蔵のモディリアーニの傑作のほか、内外から「エコール・ド・パリ」の優品が集まっています…

いずれが菖蒲(あやめ)か燕子花(かきつばた)――モディリアーニの裸婦、2大傑作が出会うとき

■いずれが菖蒲(あやめ)か燕子花(かきつばた)――モディリアーニの裸婦、2大傑作が出会うとき■ 画像でお示しした2点のヌードは、いずれもイタリアのモディリアーニ(1884-1920)の作品です。目下開催されている大阪中之島美術館の開館記念展で、同じ…

「色から読み解く西洋名画~ダ・ヴィンチから、マティスまで」その②

■黄色とブルーの補色づかいは、ゴッホが始めた】(5・27講演会の一部ご紹介) 《カラスのいる麦畑》は、精神を病んだゴッホが南フランスからパリ北郊に移り住んで、ついにピストルで自死を図るその2週間前に描かれた作品です。アムステルダムのファン・ゴッ…

【大阪中之島美術館5・27 講演会ごあんない】

岩佐倫太郎のブログの読者の皆さん、こんにちは。コロナ禍でこの2年ばかり自粛していた講演活動をいよいよ再開いたします。10年以上にわたって書き続けた僕のメルマガ(一部をこのブログに再録しています)も、300号を突破しそうなので、その記念も兼ね…

大阪中之島美術館 開館記念 超コレクション展    佐伯祐三 《煉瓦焼》

絵と闘って死んだ佐伯の、真情あふれる遺言がこれ。 去る2月2日に待望の開館を果たした大阪中之島美術館の開館記念展も、3月21日で幕を閉じようとしている。僕も各地の講演や講義で観覧をお勧めしてきたが、多くの方から「見ごたえがあった」、「時間が足ら…

【大阪中之島美術館 開館記念 超コレクション展】 アンドレ・ドラン《コリウール港の小舟》

■こんな色の洪水なら、溺れるのも楽しいだろう。 佐伯が死の半年前、パリ近くで描いた傑作の話は次回にさせていただいて、先に今展の目玉のひとつでもあるアンドレ・ドラン(1880-1954)の《コリウール港の小舟》について語ろう。僕自身も昔から別格的に好き…

【大阪中之島美術館 開館記念 超コレクション展】佐伯祐三《郵便配達夫》

■この郵便夫は、もしかしてゴッホが遣わした神様か。 芸術家が死ぬ前に残す名作を「白鳥の歌」と言うのはご存知かと思うが、この作品などさしずめ、白鳥の歌と言うにふさわしいだろう。大正・昭和初期の日本の洋画家、佐伯祐三(1898-1928)による《郵便配達…

【大阪中之島美術館 開館記念 超コレクション展】 モディリアーニ《髪をほどいた横たわる女》

■ヌード画500年の歴史が、この絵から見えて来る。 去る2月2日に待望の開館なった大阪中之島美術館。館のアイコンとも言うべきアメデオ・モディリアーニ(1884-1920)のこの絵は、大阪市が新美術館の建設を決め、開設準備室を設立して最初に買った作品だ。価格…

【メトロポリタン美術館展④最終回 セザンヌ 《リンゴと洋ナシのある静物》】

【メトロポリタン美術館展④最終回 セザンヌ 《リンゴと洋ナシのある静物》】 大阪展は来年1月16日まで。東京展は2月9日から。国立新美術館(六本木)で。 左は青い洋梨、右には赤い林檎が机に無造作に置かれている。何という事は無い、画家の故郷の南仏のあ…

【メトロポリタン美術館展③ ブーシェ 《ヴィーナスの化粧》】

【メトロポリタン美術館展③ ブーシェ 《ヴィーナスの化粧》】 フランソワ・ブーシェ(1703-1770)は、18世紀のフランス王宮が生んだロココ様式を代表する画家です。今回日本で展示されている《ヴィーナスの化粧》は、ブーシェの作品群の中でも、とりわけ優…

【メトロポリタン美術館展② カラヴァッジオ 《音楽家たち》】

【メトロポリタン美術館展② カラヴァッジオ 《音楽家たち》】 講演などのあとでよく、「ルネサンスとバロックはどちらが古いんですか?」と質問を受けることがあります。知っている人には当たり前すぎることかも知れないですが、ルネサンスが先でそれにバロ…

【メトロポリタン美術【メトロポリタン美術館展① ティツィアーノ 《ヴィーナスとアドニス》】

【メトロポリタン美術館展① ティツィアーノ 《ヴィーナスとアドニス》】 大阪・天王寺の市立美術館に、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する西洋絵画の名品65点がやって来ています。うち46点は日本初公開。東京は来年2月からです。「西洋絵画の500…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑧――最終回】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑧――最終回】 1901年に始まったノーベル文学賞の歴史を遡ってみると果たして、幻想や虚構の文学は意図的に排除されて来たことが判明する。戦前では「変身」のカフカを始め、プルースト、ジョイスら現代文学の…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑦-条件の欠格?】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑦-条件の欠格?】 ノーベル文学賞は、一冊の著作に与えられるものでなく、長年にわたる文学活動に対してのいわば功労賞だ。世界の多文化、多言語の中から一人を選ぶとなると、選ぶ側も相当なコンセプトと言…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑥-ボブ・ディラン】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑥-ボブ・ディラン】 結論に進む前に、ボブ・ディラン(1941~)について少し触れておこう。2016年のノーベル文学賞の受賞者である。フォーク・ロック界の世界的なレジェンドではあるが、文学賞が音楽家に与…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑤-第3潮流とは】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか⑤-第3潮流とは】 「オリエンタリズム」と言う言葉がある。耳慣れないかもしれないが、エドワード・サイードと言うパレスティナ生まれのアラブ人で米国在住の文学批評家が、1978年に同名の著作を発表した。要…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか④】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか④】 もう多くの読者もお気づきのように、第一潮流の「神の不在と人間の実存」の課題は、じつは答えは無い。答えのないものをいつでも四六時中、考えているのも疲れる。その時、スウェーデン・アカデミーのノ…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか③】

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか③】 ルネサンスで神の絶対性は揺らいだ。ここから西洋人の、「神離れと目覚め」の精神史が始まる。17世紀になるとフランスの哲学者、デカルトはこう言った。「われ思うゆえにわれあり」――まだ神を全否定す…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか②】 211016

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか②】 211016 カミュの「ペスト」は、ヨーロッパにも大惨劇をもたらした第2次世界大戦の暗喩とも読める。ノンフィクションのように錯覚しがちだが、ペスト自体はこの200年ほど、ヨーロッパで流行した事実はない…

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか①】 211011

【なぜ、村上春樹はノーベル文学賞を獲れないのか①】 211011 今年も村上春樹がノーベル文学賞を逃した。お昼のニュース番組ではコメンテーターたちが、「いや、彼はまだ世界の文壇に出て20年にしかならず、年季が浅いですから」などと評論しているのを聴きな…

【ショパン・コンクール、1位リウは舞踏派、2位反田は武闘派】

【ショパン・コンクール、1位リウは舞踏派、2位反田は武闘派】 もう結果はご存知の方も多いだろう。ショパン国際ピアノ・コンクールの1位はカナダのブルース・リウだった。僕の独自予想ではリウを2位グループにランクしていて、反田恭平が優勝候補のイチ押し…

【ショパン・コンクール 反田恭平が2位  岩佐の予想と結果はいかに】

(21021年10月22日にFBに投稿したものです) 【ショパン・コンクール 反田恭平が2位 岩佐の予想と結果はいかに】 ショパン・コンクールの最終結果が出た。昨日は一日忙しくて、気にはなっていたが敢えて見ないようにしていた。反田恭平や小林愛実の日本勢…